『パパの名前』(1)*
皆さん、お久しぶりです。
私、水瀬花白はめでたく三ヶ月前に“堤 花白”になりました。
結婚を決めた私達に、初めは母方の親戚の人達は賛成してくれませんでした。
未入籍とは言え、ママとパパは事実婚の関係にあったから……
パパと私の度重なる説得に、ママの妹である叔母さんは私が二十歳になれば結婚することを許すと言ってくれたの。
そして、私の二十歳の誕生日に、私達は海辺の小さな教会で式を挙げることにしました。
参列者には、親戚や親友の蓮ちゃん、パパの編集担当の綾瀬さん、そして刹那さんなどの親しい友人を招いて―――
――そして今、パパと結婚して三ヶ月。
「花白ちゃん、おやつが出来たよ」
「は〜い」
パパの声に、庭で百合の花に水やりをしていた私はリビングの窓から室内へと戻った。
結婚したからと言って、パパとの生活に特に変化は無い。
(私の苗字が変わったくらいかな?)
洗面所で手を洗い、ソファに座ると、前にあるテーブルにティーカップとケーキの載ったお皿が置かれる。
「今日は苺ムースケーキとラング・ド・シャ、ドリンクはアイン・シュペンナーだよ」
苺のムースケーキは苺のムースの中に、苺のジュレやバニラ風味のソース、スポンジ生地を何層にも重ねたケーキ。
アイン・シュペンナーは、ウィーン生まれの飲み物。
熱い珈琲に、固めに泡立てた冷たいホイップクリームを浮かべて、混ぜずにそのまま飲むことで温度差を楽しむことが出来るの。
私はケーキを一口食べ、続いてアイン・シュペンナーを一口飲んだ。
「おいしい〜」
「そう言って貰えると、作った甲斐があるね」
隣に座ったパパは笑いながら腕を伸ばし、私の口元についた生クリームを細く長い指で拭った。
「あっ……!」
そして、その指を自分の口に運んで舌で舐めとった。
(……うぅ)
パパの赤い舌が指先を舐める仕種は何だか凄く卑猥で、見ていると顔が赤くなる。
それは情事の時、私のナカへ入れていた指に付いた蜜を、舌で舐めとる時の光景を彷彿とさせた。
「どうしかした? 顔が赤いけど」
パパの言葉に、ハッと我に返った。
「な、何でもないよ、パパ」
あはは……、と笑ってごまかしケーキを口に運ぶ。
チラリとパパを見ると、パパはじ〜っと私の顔を見つめていた。
(何で……)
「花白ちゃん」
「はっ……、はいっ!」
いつになく真剣な表情のパパに、反射的に背筋をピンッと伸ばす。
そして、ゆっくりとパパは口を開いた。
「……いつになったら、僕を名前で呼んでくれるのかな?」
(え……、名前……?)
「はい?」
「僕達は結婚したんだから、もう…と言うか最初から父親でも無いんだけど。“パパ”じゃなくて、ちゃんと名前で呼んで欲しいなって……」
「じゃないと、いつまでも結婚したって実感が沸かなくて」とパパは続けた。
(確かに、結婚して名前呼ばないのは、ちょっと……いや、かなり変……かな。子ども居ないわけだし。でも、パパを名前でなんて……)
心の中で、パパの名前を呼んでみる。
(……英さん。うぅ……。駄目、恥ずかしくて呼べない)
「いや、別にパパで良いじゃない。呼ぶの恥ずかしいもん」
私の言葉に、パパはしゅんっ…とうなだれた。
「それに、あ。私ね、パパに話があるの」
私は空気を変えようと、無理矢理話題を切り換えようとした。……んだけど……
「きゃっ!?」
突然パパに押し倒され、ぐるんっと視界が逆転する。
驚きに見開いた瞳の先には、不機嫌そうに眉を寄せたパパの顔。
「また“パパ”って呼んだね」
唇に息がかかる程の至近距離で、囁かれる。
歳を重ねる毎に、パパの声は低く深みを増していく。
その低重音の声を聞いただけで、ザワザワと肌が粟立つ。
「あっ……、だって……」
(初めて会った時から“パパ”って呼んでたから、今更恥ずかしいんだもん)
「呼んで……」
今度は耳元で囁かれる。
パパは狡い。
私がその声に弱いことを知っている癖に。
「やだ……。あぁ!」
否定すれば、まるで罰を与えるかのように耳朶を甘噛みされる。
舌を這わされ、耳の中に挿入された。
ピチャピチャと濡れた音が鼓膜に響いて、羞恥で顔が赤くなる。
「あぁ……んっ!」
「そう、仕方ないね」
パパの手が、カーディガンのボタンを外していく。
カーディガンを脱がせば、フリルの付いたキャミソールが現れる。
パパの意図を知り、私は慌てた。
「待って、まだお昼……」
「はい、万歳」
「えっ、えぇ!?」
幼い頃からの癖で、反射で腕を上に上げてしまう。
スルリ…とキャミソールとブラを脱がされる。
「あんっ」
直ぐに胸の飾りを口に含まれ、輪郭を確かめるように舌で円を描くように舐められる。
「花白ちゃんのココ、大きくなった?」
舌でグリッと押し付けるように捏ねられ、音を立てて吸われる。
「やっ…パパのせ……、あぁんっ!!」
もう片方の胸の頂きを親指の腹で押し潰すように愛撫され、身体がビクンッと跳ねた。
「うん。僕のせいだね。僕だけのものだよ。これからも、ね」
「んっんっ……!」
パパの言葉に身体が熱くなる。
パパの手が腰に触れ、ウエストがゴムになっている焦げ茶色の膝丈スカートを下着と一緒に脱がされる。
何度も身体を重ねてきたのに、今でも裸を晒すことに慣れない。
「や……見ないで」
じっと見つめてくる視線から逃れるように、私は恥ずかしさから顔を逸らした。
「どうして? 凄く可愛いよ……」
「あっ……!」
膝を立てた足の狭間に手を添えられ、ゆっくりと開かれる。
パパの指が、蕾に触れる。胸の愛撫で既に濡れたそこに、ゆっくりと人差し指が挿入される。
「ん……」
膣内が濡れているとは言え、乾いた指を挿入された私は苦痛から僅かに眉を寄せた。
NEXT 君捧TOP