『パパの名前』(2)



「痛い?」


 パパは指を引き抜き、テーブルに置かれたティーカップの中から浮かんでいる生クリームを人差し指と中指で救い取った。
 そして、クリームで濡れたニ本の指を再び膣内に挿入する。


「ん、ん……」


 クリームに包まれた指で、具合を確かめるように浅い部分で抜き差しされる。


「あっ、あっ!」

「柔らかいね」

「ああんっ!」


 長い指が、奥深いところまで穿ってくる。
 自分の感じるポイントを指の腹で擦られ、身体に電流が走ったようにビクンと震えた。
 どんどん指の動きが速くなり、指が抜き差しされる度に内壁が指をしゃぶるように蠢く。


「あ、あ……や、あぁ…だめ……」


 与えられる刺激が強すぎと、声が溢れて止まらない。
 その声を恥ずかしがる余裕も、もうなかった。
 ただ、指では届かない奥の疼きを静めて欲しい。

 私の言葉に、パパは指を引き抜いた。

 ベルトをといてスラックスのファスナーを下ろす音が耳に届いた。


「ん……今日は、ゴムつけて」


 高校生の頃、私の我が儘で一度だけ中に出してから、結婚するまでパパは避妊を徹底した。
 パパの中ではあの一度のことも、暫く自己嫌悪に陥る程許せなかったようだ。
 結婚してからは、私の体調に合わせて避妊をするようになった。


「分かった」


 私の言葉にパパは頷き、ソファの横の引き出しの中からゴムを取り出して屹立に装着した。
 薄い膜にに覆われた熱いモノが、蕾に宛がわれる。


「息を吐いて」

「あ、あ………んっ」


 ほぐれた膣内に、熱い楔が入ってくる。狭い内壁が開かれ、ゆっくりと奥まで入り込んで行く。
 奥まで入れば、今度はゆっくりと中を穿たれる。


「あっ、あ………ああぁ!」


 パパのモノが、私のナカを甘く満たしていく。
 じわじわと快楽が押し寄せ、それはやがて大きな波になる。

 深く入れられた楔がゆっくりと引き抜かれ、途中でまた深いところを穿つ。
 内壁を亀頭で抉られ、擦られた場所から熔け出して行きそうな錯覚さえする。


「ふ、あっ、あんっ!」

「気持ちいい……?」

「……ちいい…、ぁ……んん!」


 ナカを穿たれながら、親指の腹で愛芽を刺激される。
 愛芽を擦られる度に身体が跳ね、男根をくわえている場所が揺れ、パパですら意図せぬタイミングで私の感じるポイントを突く。


「あ……、あっ…ぁ」


 快楽の波がどんどん大きくなっていく。
 出口を求めて、波は荒れ狂う。


「も……ぁ、イかせて……んっ」

「じゃぁ、僕の名前を呼んで」

「ずるい……ぁんっ」


 深く深く、隙間無く膣内を熱い楔で埋めつくされ、自分以外の鼓動が内側から響いてくる。
 楔が膣内で重を増していく度、確かな喜びを私にもたらす。


「言わないなら、……このままだよ」


 クスリ…と笑う声が聞こえてきて、私はイヤイヤをするように首を振った。


「ああっ……あ、ぁあ!」


 先端の太いところで子宮口を穿たれ、また焦らすように浅いところを擦られる。
 あと少しでイケるのに、そのあと少しの刺激が足りなくてイケない。


(この甘い攻めが、ずっと続くの……?)


「……さん……」

「聞こえないよ?」

「ぁ…、え…いさん……」


 消え入りそうな声で、切れきれにパパの名前を呼ぶ。


「そう。良い子だね」


 パパの瞳が優しく眇められ、何度目か分からないキスが落ちてくる。


「うぁ…ん、あぁ…ふ……英さん」


 舌を絡め合う、濃厚なキス。


「ふぅっ…、あっんぅ! ひゃぁっ…ぁっ……はっ」


 唇を合わせたまま、ガクガクと揺するように激しく突かれる。
 入口まで引き抜かれ、今度は根元まで一気に押し込まれる。
 燻っていた熱が一気に溢れてくる。


「あんっんっ、ん、ぁあ!!」


 達した直後にも強く揺さぶられ、何度か抽挿を繰り返された後でパパの屹立が大きく膨らんだ。


「あ……っ!」


 次の瞬間、ゴム越しにパパの屹立が弾けた――
 唇が離れ、私はパパの背中に腕を回した。


「大好き……」

「僕も好きだよ」


 繋がったまま、今度は啄むようにパパと口づけを交わす。


「ん……」


 触れ合うだけの口づけはどこまでも甘く、互いの心を満たしていった。



***



 二人でお風呂に入って、綺麗に片付けたリビングのソファに並んで座る。


「そう言えば、花白ちゃんの話って?」


 氷の入った麦茶のグラスを傾けながら、パパが思い出したように私の顔を見る。
 麦茶と同じ、茶色がかったパパの瞳に私の顔が映る。


「ん〜。簡単に言えば、英さんって呼ぶのは来年でおしまいってこと……かな。来年の夏には、またパパって私に呼ばれるの」

「どう言うこと?」


 不思議そうなパパの顔。
 そっとパパの手首を掴み、私のお腹に乗せる。


「お腹にね、赤ちゃんがいるから」

「は……?」


 パパの瞳は驚きで見開かれ、次いでみるみる顔色が青に変わっていく。


「何でもっと早く言わないの!」


「言おうとしたら、押し倒されちゃったんだもん」


 ツンッとそっぽを向き、パパから顔を逸らす。


「ん?」


 膝に重みを感じて下を見ると、パパが私の膝に頭を乗せていた。
 

 腹部に耳を宛て、まだ聞こえぬ心音を貴方は捜す。


「ふふっ」


 私はそっとパパの頭に手乗せ、瞳を閉じて柔らかな髪を梳いた。


 貴方に触れる度、触れられる度、胸に幸せの花が咲く――



*END*

澪様に捧げます。
キリリク有難うございました。



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