『チョコと本音』(1)



「花白ちゃん。綾瀬さんから頂いたチョコレート食べる?」


 リビングでDVDを観ていると、キッチンからパパが珈琲とチョコレートの乗ったお皿をトレイに乗せてやって来た。
 お皿の上には、綺麗な形をした一口サイズのチョコレートが並んでいる。


「わぁ〜。これって駅前の有名ショコラティエのお店のだよね?」


 最近では日本でも、チョコレート職人のことをショコラティエ。チョコレートのお店のことをショコラ・ブティックと言う。


「そうみたいだね。ブランデー入りのチョコレートが女性に人気があると綾瀬さんが言っていたよ」


(これ一つ三百五十円とか五百円するのに……。編集者さんってお土産そんな持って来てていいのかな? 経費? もしかして自腹なのかな?)


「ね、パパ。綾瀬さん最近頻繁に差し入れくれてるけど、どうして?」


 珈琲に角砂糖を入れているパパに問うと、パパはにっこりと笑った。


「簡単に言えば僕の戦利品ってとこかな」


(戦利品って……)


「何の?」

「花白ちゃんは知らなくて良いことだよ。はい、珈琲は角砂糖一つで、ミルクがたっぷりで良いんだよね?」

「う、うん……」


(あれ? また何だかごまかされた気が……。パパと綾瀬さんって一体……)


「はい、花白ちゃんどれ食べる?」

「ん〜、これかな」


 お皿を渡され、白と黒のグラデーションがかったチョコレートを摘み、口に運ぶ。


「おいしい!!」


 口に入れると舌の温度で溶け出したチョコレートからは、カカオの香りとシャンパン入りのチョコレートクリームの味が口の中に広がる。


(一粒が高価なのも納得かも)


「良かった。珈琲のお代わりもあるからね」

「うん。有難う」


 パパにお礼を言って、チョコレートをまた口に運ぶ。
 トリュフにホワイトチョコレート、シェル形にマーブル模様。
 まるで宝石のような見た目のチョコレート。

 口に運ぶチョコレートはどれもブランデーの味がして、なんだか身体がポカポカとしてくる。


「ん……暑い……」


 秋に入り、室内でも長袖を着るようになった。
 今日は花柄のシャツに黒いカーディガン、マーメイドラインの白いスカートをはいている。


「珈琲を飲み過ぎたのかな、少し顔も赤いね。エアコンつけようか?」


 パパの心配そうな言葉に首を振って私はカーディガンを脱ぎ、シャツのボタンを四つ程外した。


「ん……」


 だんだん頭がぼーっとしてきて、目がトロンとしてくる。


「花白ちゃん、胸元開けちゃ駄目だよ」


 恋人のあられもない姿に、パパはさすがに不信感を募らせる。


「や、暑いの……」


 ボタンをとめようと胸元に伸ばされた手を、私はギュッと握る。


「花白ちゃん。もしかして……酔ってる?」


 熱を持ったように赤い頬。まるで、駄々っ子のような花白ちゃんの言動。


「酔ってないもん」


 酔っぱらいは皆そう言うんだよ……。と僕は心の中で思った。


「花白ちゃん、とにかく手をどけなさ……うわっ」


 花白ちゃんに手を捕まれたまま、僕はソファの上に押し倒されてしまった。


「イヤ」


 ぷいっと頬を膨らませて、花白ちゃんが顔をそらす。


(完全に酔ってるな……)


 花白ちゃんを退かそうとするけれど、今度は首に腕を回されて身動きが取れない。


「花白ちゃん……」

「イ・ヤ。ね、パパ。キスして」


 諭そうとする僕の言葉を無視して、花白ちゃんは僕の唇をキスで塞いだ。


「ん!?」

「ふぅ……んん…っあ」


 唇を舌でなぞってから薄く開いた隙間から舌を入れ、僕がいつも花白ちゃんの口内を愛撫する時のように舌先でなぞる。


「あ…んん……」


 いつになく積極的な花白ちゃんに僕は驚いてされるがままになっていたけれど、気を持ち直して自分からも舌を絡ませ始めた。
 キスをしながら、花白ちゃんの背中の窪みに沿ってなぞるように指を動かす。


「ん……あっん」


 もう片方の手で開いた胸元へ手を入れ、ブラごしに胸を揉んでいく。
 花白ちゃんはブラ越しのもどかしい刺激だけでは物足りないようで、身体を起こして自分でシャツとブラを外した。
 仰向けの僕の腰の上に跨がるように座っている花白ちゃんの白い胸の膨らみを、手を伸ばし揉みしだく。



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