『選ぶ未来』



「ふーん。パパさん今日帰り遅いんだ?」

「うん」

 昼休みにお弁当を食べながら、新しく出来た友達に今朝のことを話した。

「やっぱパパにとって私は子どもでしかなのかな……」

(パパに良い子だねって言われるのは嬉しい。だけど、いつからかな?  この言葉が辛くなったのは……)

「そりゃぁ、奥さんの娘だし。忘れ形見みたいなもんでしょ? だったら、やっぱ娘意識が強くても仕方ないんじゃない?」

「……だよね」

 義理とは言え“娘”に恋するなんて、ドラマの中での話しだよね。

「けどね、自分から動かなければ何も変わらないのよ?」

「分かっているけど、変化って怖いし……」

 パパに特別な感情があるって知られて避けられたら、きっと生きていけない。

「じゃぁパパさんに恋人を作られたらどうするの? はいそうですかって言える? 自分を恋愛対象として見てもらわなければ、意味ないのよ?」

 お弁当のハンバーグをフォークで勢いよく突き刺しながら、力説される。

「蓮ちゃんって、なんだか凄いね……」

 同じく外部入学の霜月 蓮(しもつき れん)ちゃんは、つい最近まで海外で生活していた帰国子女。
 パパとの相談相手なんだけど、アドバイスが的確でいつも助言を貰ってるの。

(もしかして、蓮ちゃんの彼氏さんも年上なのかな? 経験上の助言?)

 考えが顔に出ていたのか、「私のことは良いのよ」とかわされてしまう。
 この話は終わりと言わんばかりに、黙々と食事を続けている。

「え〜、ケチ」

 『恋人をつくられたらどうするの?』

(そなったら、私はきっと辛くて、寂しくて。それでも、パパに「おめでとう」って、無理に笑ってお祝いするんだろうな……)

 自分とパパが恋人同士になってからのビジョンよりもそっちの方が鮮明で、考えただけで、胸が苦しくなった。

「―――えっ!? ちょっ、お弁当食べながら泣き出さないでよ!」

 この涙は、きっとパパとの変化を恐れる証。

 パパが好きだから、告白するのが怖い。
 パパが好きだから、他の誰かのものになって欲しくない。

 動くことの出来ない私は、どちらの未来を選ぶのだろう―――?



*END*



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