『年上の恋人』(1)
私の好きな人には、私と同い年の息子が居る。
「ね、次はいつ会えるの?」
ベッドに俯せになりながら、蓮(れん)はスーツに袖を通している信に声をかける。
身体には情事の後の倦怠感が広がっている。
(もっと、一緒に居たい……)
「さぁ、どうかな……」
(また、暫く会えないんだ……)
信と蓮が会えるのは、月に二回程だ。それも、金曜日の夜から日曜日の朝までの限られた時間だけ。
信には守るべき家庭があり、家での家事もあるから休日全てを蓮に当てることは出来ない。
息子はもう高校生とは言え、父子家庭の為心配なのだと蓮も理解している。
(でも……。それでも、少しでも一緒に居たいって思うのは、我儘なのかな? 信さんは、寂しくない?)
「また、二週間後?」
「寂しいの?」
きっちりとスーツを着た信はベッドの端に座り、蓮をギュッと抱き締めた。
(……寂しくないわけない。今日だってテストのせいで一ヵ月ぶりだったのに。毎日だって声聞きたいし、会いたいよ。でも、言えない)
言えばまた、笑顔で「別れてもいいよ」と、笑って言われてしまうから。
(だから、言わない)
「ううん。大丈夫。会えなくてもメール出来るし」
蓮からメールを送りつけるが、返事は来たり来なかったり。
信からの返信は殆ど来ない。返事が来ても文章はとても短い。
「私と居てもつまらなくないかい? 蓮と同い年の子のように毎日会えないし、堂々とデートにも出かけられない」
(聞きたくないよ。そんなこと。優しい声で、そんな残酷なこと言わないで……)
「今でも、蓮の告白を受けたことを後悔しているよ」
(『後悔してる』……?)
蓮はもう何も聞きたくなくて、信を抱き締める手に力を込めた。
その手が震えてしまわないように―――
「私は、信さんが好きなの。毎日会えなくたって大丈夫。デートもできなくても平気。だから、後悔してるなんて言わないで」
「蓮…・・・」
名前を呼ばれ、信の肩に埋めていた顔を上げる。
「泣いちゃってるね」
そう言って少し困ったように眉を寄せて、優しく涙を拭ってくれる。
気づかないうちに、いつの間にか泣いていたようだ。
「泣いたんじゃなくて、信さんが泣かせたんだよ」
少し怒ったように、唇を尖らせて言い返す。
(……少し子どもすぎたかな?)
「んっ!」
尖らせた唇に、信からの触れるだけのキス。
「すまないね。じゃぁ、今度は慰めてあげよう」
悪戯っぽく信は笑い、数時間前まで激しくお互いの熱を分け合ったベッドに蓮を押し倒した。
「……あっ!」
ベッドのスプリングは柔らかくて、身体を優しく受け止めてくれる。
そして、直ぐに深いキスが降ってくる。
「んぅっ……ふぁ…」
歯列や口内の感じる部分を舐められ、舌を吸われる。優しい愛撫に、身体は再び熱を帯びていく。
長く深いキスが終わると、唇は首筋へと移動する。唇が肌を吸う度に、身体は敏感に反応してしまう。
「あっ! ……んぁ…ぁ」
「また涙が出てるね。感じすぎちゃったかい?」
言葉で攻められ、恥ずかしさに顔が熱くなる。
(誰のせいだと思って……!)
「嘘つき。慰めてくれるって言ったのに……」
睨みながら信を見るが、泣き顔では迫力が無いのか、信の顔は笑ったまま。
(〜〜〜悔しい)
信からは大人の余裕しか感じられず、子どもな自分は信の言葉一つに振り回されてしまう。
「……らい」
「ん? 蓮、何て言ったんだい?」
声が小さすぎて聞こえなかったのか、聞き返される。
「もうっ。意地悪ばっかりの信さんなんてきらっ……んんっ!!」
言い終わらないうちに唇を塞がれ、キスをされる。
さっきしたキスよりも激くて、容赦なく舌を吸われる。
「やぁ……んんっ!」
(怒らせた……?)
「ごめんね。いっぱい泣かせた後に、いっぱい慰めてあげるから」
そう言って、今度は胸の膨らみに唇を寄せる。
胸の頂きを舌で転がすように舐められる。生暖かくザラザラとした舌に、胸の飾りは固く尖り始めていた。
「ひゃっ! ああぁん…あぁ!」
触れていない方の胸は、手で優しく揉みしだかれる。
「んっんん! あっぁ……」
(それ、泣かせるじゃなくて、鳴かせるってことじゃ……)
「素直に感じて乱れる蓮はとても可愛いよ。……ココもね」
信の手が蜜部に触れる。そこはまだ触れられいないのに、既に濡れ始めていた。
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