「第四話 嵐の夜」(2)
淡い光りの中、唇が解かれ浴槽に珀明が入ってくる。
浴槽はニ人で入るのにも十分な広さがあり、奏は珀明に背中から抱き込まれるように座らされた。そして直ぐに、胸に背中から伸ばされた腕が絡みつく。
「あ、んっ……あっ!」
乳房を揉まれ、キスで尖りつつあった乳首を指の腹で押し潰すように捏ねられる。
「あん、あっあっ!」
クップリと硬く膨らんだ乳首の感触を楽しむように、指で揉んでは軽く抓られる。その度に湯船の中で身体が跳ねた。
手は下へと伸びて行き、胸での愛撫で既にホクつく蕾の縁を撫でるように指の腹で触れられる。
「ひゃんっ……!」
お湯で柔らかくなっていた蕾へ、指が挿入される。
「んあっ……はっ……」
いつもとは違う指の感触に、ゾクゾクと身体が震える。
浴室に響く声は卑猥で、奏は恥ずかしさに両手で口を押さえた。
「もうナカが柔らかいな……」
珀明は奏の膣内に入れていた指を引き抜き、身体を反転させた。
珀明と向かい合い、膝の上に跨がる体制をとらされる。
「ああぁ……!」
腰を掴まれ、身体を下に引き下ろされた。そうすれば、蕾に固定された珀明の熱く滾った楔が膣内に打ち込まれる。
水の中は浮力のせいで不安定で、奏は珀明の肩に手を置いた。
「あっあっ……あぁっ」
珀明が下から突き上げる度、チャプチャプと湯が激しく波打ち、浴槽から沢山の湯が排水溝に向かって流れていく。
それを横目で見ながら、奏は珀明から与えられる快楽の波に襲われる。
「んぅ、んっ……ふっ」
湯船の中で貫かれるのは初めてで、浮力のせいでいつもよりも緩やかな抽挿に、接合部から一緒に湯が入ってくるような錯覚を憶えた。
「ちっ……」
「きゃっ……!」
思うように動けないのか、珀明は舌打ちをするとナカの楔を引き抜き、奏を立たせタイルの壁に手をつかせると、再び男根を後ろから一気に突き入れた。
「は、あんっあぁ……」
珀明は突き上げながら奏の乳房に手を伸ばし、突き上げの動きに合わせて揺れる豊かな膨らみを揉みしだいた。
「だめっ、あぁ……」
グチュグチュと接合部からは水音が聞こえ、喘ぎ声と一緒に浴室に響いた。
次第に珀明の動きが激しくなり、壁についた手に力が入らずずり落ちそうになる。
「もっと鳴くといい。厭らしくお前の声が響くのが心地いい」
性感帯である耳の側で囁かれ、羞恥心とともにゾクゾクとした快感をもたらす。
「あっあっ、ああん……嫌ぁ……」
「嫌じゃないだろう? ココは私を嬉しそうに銜えて、奥に引き摺っていくようだ」
珀明の言葉に、かぁっと身体が恥ずかしさで熱くなる。
浅ましい身体は快楽に弱く、襞は珀明の楔に熱く絡みついている。
「嫌……言わないで、……あっ! あぁぁ!」
乳房を揉んでいた手が快感で少し膨らんだ愛芽に触れ、摘むように刺激される。
三点を同時に刺激され、ガクガクと身体を揺さぶられながら、奏は一気に登りつめて行く。
「あぁっ……んんん!」
最奥を穿たれ、一瞬目の前が真っ白になる。そして直ぐに、子宮口に熱い精液が注がれる。
お湯のように熱いそれを、珀明は更に奥へと押しやるように楔を動かした。まるで、一滴も蕾の外に零さないというかのように。
(そんなに……、『奏』の子どもが欲しいの?)
互いに荒く息を吐きながら、奏は心の中で問い掛ける。
珀明は膣内から楔を引き抜くと、崩れ落ちそうになる奏の身体を腕で支えながらシャワーのコックを捻る。
浴槽から出され、熱いシャワーを頭からニ人で浴びる。長く湯船に居たからか、それとも行為が原因か酷く自分の身体が重たく感じた。
(熱、い……。のぼせたのかしら……)
気づけば珀明の腕に支えられたまま、奏は意識を手放していた。
意識が遠くなる瞬間、誰かに強く抱き締められた気がした―――
珀明は崩れ落ちた奏の身体にバスローブを着せ、抱き上げて部屋まで運んで行く。
ベッドに下ろし、内線で葉月に燭台と濡れタオル等を用意させた。
「葉月……、電力の回復にどのくらいかかる?」
ベッドの端に腰かけ、赤くなった奏の顔色を見ながら、葉月に確かめる。
「はい。もうじき回復すると連絡がございました」
「そうか」
葉月の言葉に短く返し、共に部屋を出た。
「珀明様、本日光明(みつあき)様より御連絡がございました」
葉月の言葉に、珀明は足を止める。
「叔父上が?」
前当主だった祖母の息子、つまり珀明の父の兄弟に当たる人物だ。当主就任式で珀明が当主になることを最後まで反対していた相手でもある。
「はい。近々お目通り願いたいとのことです」
(目通り……)
「調度いい。いい加減あの男の小細工にも飽きてきた所だ。内偵者共々お引き取り願おう」
(倉橋一族から永遠に、な……)
「第四話 嵐の夜」終
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