『閉館後の図書館で』



「私……、何してるんだろ」


 本棚に囲まれた奥まった暗い場所でしゃがみながら呟く。
 和威から逃げてここまで来たけど、閉館時間が過ぎて照明が落とされた。

 唯一の光りは、窓から差し込む日差しと非常灯だけ。


(てゆーか、何故館外へ出なかったのか、自分。馬鹿じゃんあたし。まだ事務室に人いるかな? いつまでもここに居たら困ったことになるよ)


「ん……?」


 遠くから、小さく足音が聞こえてくる。


(誰? 見回り?)


 足音は次第に近くなり、横の通路を懐中電灯の細い光が照らすのが見えた。
 そして、ライトは冴のいる場所にも向けられる。


「冴、ここに居たのか」


 現れたのは、和威だった。


「なんで?」


(どうしてここに居るの?)


「退館記録が無かったから。悪かったな、仕事終るまで捜せなくて」


 申し訳なさそうに、和威が明かりを消しながら言う。


「別に……、アンタは悪くないでしょ」


(何で謝るのよ)

 
 和威も冴の前でしゃがみ込み、顔を覗き込んでくる。
 焦げ茶色の瞳に、冴の顔が映る。


「さっきは悪かったな。あいつらの魂胆は見えみえだけど、仕事だから無下には出来ないんだ」

「アンタの為じゃないから」


 ふんっと、和威から目を逸らす。


(そうよ。和威の為じゃない。私が嫌だったから、ああしたのよ)


「うん。それでも、サンキューな」


 まるで、何もかも分かったかのような和威の言葉。
 いつもみたいに言い返せば良いのにと思う。

 和威は優しく冴の顔を両手で包み込むように手を添えた。
 口は悪くても、いつだって触れて来る手は優しい。

 次に何をされるのか分かっていたけれど、冴は顔を逸らさなかった。


 しっとりと、唇が重なる。


 舌は直ぐは入って来ず、上唇を舌でなぞられ、下唇も軽く吸われる。


「ふ……、ん……」


 舌がゆっくりと口腔へと入り、歯列をなぞるように刺激していく。


「ん、ふぅ……」


 自分でも気がつかない内に、甘い声が漏れる。
 耳に届く自分の甘さを含んだ声に、官能が刺激される。

 やがてキスは舌を絡めるものへと変わり、濡れた音を含んでいった。


「ん……、んんっ!」


 互いの唾液が混じり、飲み下し損ねたものが頷を伝う。
 たっぷりと時間をかけ、舌で愛撫される。
 
 名残惜し気に湿った音を立てて唇がとかれ、今度は首筋に唇が移動する。

 チュクッと音を立てて肌を吸われ、身体がゾクリと震える。


「んっ……!」


 ブレザーを脱がされ、シュルリと音を立ててネクタイも解かれる。

 第二ボタンまで外されたシャツの隙間に、唇が移動する。
 肌を吸われながらボタンが外され、肩からシャツが落とされる。

 ブラの前ホックに手をかけられ、プツッという小さな音が響き胸が露になる。
 胸の片方の頂きに口付けられ、チュッと音を立ててさせて吸われる。
 同時にもう片方の胸を手の平で揉まれ、刺激される。


「ん、ん……! やぁ、ん。吸っちゃ……、あ、あっ!」


 コロコロと飴を舐めるように硬く尖った頂きを舌で転がされ、時折舌で押される。


「はぁ……、はぁっ! ああっ!」


 強弱をつけてたっぷりと胸を愛撫され、冴はただ本棚に背中を預けて押し寄せる快感の波に耐えることしか出来ない。
 
 甘い刺激に思考が追いつかなくなった頃、スカートを捲って下着を脱がされた。
 淡くピンク色に色付いた場所が露になり、そこは既に少し濡れていて、冴がきちんと自分の愛撫に感じていることに和威は満足する。

 慎ましく閉じている場所に、唾液で濡らした中指を挿入する。


「あっ! んぅ……!」


 膣内を探るようにゆっくり抜き差しされ、円を描くように指をナカでで動かされる。


「あっ……、ぁっん!」


 人差し指も追加され、愛液も増えて少しずつ中が柔らかくなってきた頃、透明な糸を引きながら指が抜かれた。
 抜かれたばかりの蕾は、もっと強い刺激を求めて疼き伸縮を繰り返す。


「な、に……?」


(和威……?)


 クスリと笑われ、ぼんやりとした頭で、和威を見る。


「いや、すごく悩ましい格好だなって思って」


 普段なら静かに読書を楽しむ図書館で本棚に背中を預け、ブレザーとシャツ、ブラは肩から外れて肘までずり落ちている。
 足は膝を立てて開かれ、スカートは腰の辺りまで捲られている状態だ。


「可愛い……」

 和威は側に置いていた鞄の中からスキンを取り出し、スラックスをくつろげて装着する。


「力抜いとけよ」


 和威の言葉に、冴は身体から力を抜けるようにゆっくりと深呼吸をする。
 太腿を掴まれ、ゆっくりと和威自身が膣内に挿入される。


「いっ……! あっあっ……!」


 慣れない質量と、訪れる甘い刺激。


「あんっ……、ふぁ……あぁ!」


 浅く、深くリズムカルに突き上げられ、冴の喘ぎ声が高くなった場所を重点的に抉られる。


「はんんっ! あっあっあぁん。だ、め……やぁんん!」


 冴の絶頂が近くなり、和威も腰を使い激しく子宮口を突き上げていく。


「あっ! ああぁぁぁぁ!」


 和威から与えられる刺激に酔いしれ、ただ声を上げて翻弄される。


「―――くっ!」


 低く、掠れた声で和威が呻く。


(和威も、あたしで感じてくれてるの?)


 そう思うと嬉しくて、手を伸ばして和威の首に腕を回して抱き着いた。
 抱き着いた姿勢で、そのまま口付けを交わす。

 ナカではまた、はち切れそうな程に成長したモノが容赦なく抽挿を繰り返す。
 接合部分からは水音が激しくなり、互いの肌のぶつかる音と吐息、冴の喘ぎ声だけが、静かな館内に響いていた。


「はんっ! あっあぁんっ……、んんっ……ふぅ! そん…な、突かないで……」

「どうして?」


 涙で滲んだ目元を、和威が優しく指で拭ってくれる。
 言葉の続きを促しながらも、抜き差しを繰り返す速度は変わらない。
 激しい動きに、背中を預けている本棚がキシリと鈍い音を立てる。


「あぁっ! はんっ……破れ…っ……あぁっ!?」


(やだっ! また、大きくなっ……)


「ふーん。ゴムが破れるんじゃないかって心配してるんだ?」


 楽しそうに、和威は冴の顔を眺めた。
 艶を帯びた瞳がスッと細められる。


「あんまり煽るな。手加減出来なくなる」

「ひぁんっ! あ……、ああぁ!」


 より激しくナカを穿たれ、冴が絶頂を迎え内壁がギュウッと締まった。
 和威は息を詰まらせ、最奥を数回突き上げる。


「あ……ぁ……」


 まだ余韻に浸る冴の最奥で、和威はゴム越しに欲を放った。


「大好き……」


 頭の芯まで蕩けていくような感覚の中、冴が囁く。
 和威は冴の身体を包み込むように抱き締めて囁いた。


「知ってる……」



「閉館後の図書館で」終



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