『そして、最終日』



 いよいよ最終日。
 今日の作業は書庫整理。


「あー、今日でこの本ともお別れかー」


 名残惜しそうに、聖が館外持ち出し禁止本を抱き締める。

 タイトルは『地球儀 第十二巻』


(十二巻!? ちょっと待って、十二日間図書館に来てて、聖は内1日不在。と言うことは、一日に一巻強読んでる計算に……)


「あんた真面目に仕事してたんでしょーね!? 点数泥棒だけは許さないわよ!」


 ガシッと聖の胸倉を両手で掴んで睨みつける。


「うっ! 離せ冴。充、助けろ!」


 苦しそうに顔を歪めながら、聖は側で黙々と作業していた充に助けを求める。

 しかし……


「助けたいのは山々なのだが、今回ばかりは負が悪い。悪いが諦めてくれ」


 バッサリ、と聖を切る充。


(男の友情って儚いものね……)


「三人共お疲れ様」


 書庫の扉が開き、和威が入ってくる。


「何か仕事ですか?」

「いや、もう仕事の量が減ったから、少し早いけど君達の仕事終了を伝えに来たんだ」


(終わっちゃうんだ……)


「今日まで有難う」


(ねぇ和威。なんで笑っていられるの? 寂しくないの?)


 冴の気持ちを他所に、聖が充が抱きついてくる。


「やったな! お疲れ!」

「お疲れ様、冴、聖」


(ほんとに聖は、調子いいんだから)


「あーはいはい。充も聖もお疲れ――きゃっ!」


 突然、聖と充に抱き締められていた冴の身体が引き離される。
 引き離したのは、和威。


(か、和威!?)


「は?」

「ぬ?」


 驚く聖と充。


「冴は俺のだから、気安く触らないでくれる?」


 ―――爆弾発言


「いつの間に!?」

「何かあったとは思っていたが、成る程な……」



 驚く聖に対して、冷静な充。


(アンタ本当に千里眼なんじゃないの?)


 どう反応すればいいのか躊躇っていると、和威が耳打ちする。


(今度は冴が図書館に来て。俺に会いに……)


 同じように働けなくても、和威に会えないわけじゃない。


 ―――二人の関係は、まだ始まったばかり



「そして、最終日」終



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