『事件発生!』
聖徒会と書かれた腕章と、埃避けの黒いエプロンをつけて館内を早足で歩く。
「断固拒否します! 聖徒会には関係ないじゃないですか!」
聖徒会室で顧問の先生に向かって思わず大きな声で反論する。
「いや、だがな? 今の時期、一、二年はレポートの資料貸出や返却で図書館は忙しいんだ。何とか聖徒会で助けてくれんか?」
拝むように、顧問が手を合わせる。
高等部では六月に一、二年生の授業でレポート課題が出される。
その為、今の時期は利用者からの質問や返却作業などで図書館は忙しくなるらしい。
三年生にはレポート課題が無く、高等部を守る聖徒会に図書館への助っ人依頼がやって来たようだ。
「嫌です無理です。差し戻して下さい!」
(アイツに会うなんて絶対に嫌!)
和威に会う前なら仕方がないなと引き受けたが、奴と出会ってしまったからには話は別だ。
絶対に嫌味を言われ、こき使われるに決まっている。
何より、身の危険を感じる。
「何でお前、そんなに嫌なわけ?」
冴の形相に、流石に変だと思ったのか、顧問からの差し入れ(恐らく賄賂)のクッキーを食べている聖が聞いてくる。
「昨日、図書館に行った時に何かあったのではないか?」
こちらも恐らく賄賂の高級紅茶を飲みながら、充が聖に続く。
「えっ!? マジかよ」
(聖、ウザイ。賄賂貰ってる場合じゃないのよ)
「どうしても駄目か? 頼まれてくれたら特別に、俺の科目のテスト平常点プラス四十点にしてやるぞ? 筆記六十点でも結果満点だぞ」
「テストは実力で勝負するもんですよ。そんな怪しくて卑怯な下駄なんて要りません。ってゆーか、先生には教師としてのプライドはないんですか!」
「北條(ほうじょう)、俺は長い物には巻かれるタイプだ。他のお偉い先生からの命令に逆らう真似なんか出来ん! 遂行するためなら点数アップも躊躇わん!」
「そこは躊躇え!」
(教師の風上にもおけない男だな! 顧問の科目は普通クラスの物理。私は今回八十四点だから平常点なんて別に欲しくないし。聖と充も同じくらいの点数だし、別に平常点は必要ないでしょ)
―――が。
「是非やります!」
「うむ。そこまで頼まれては、引き受けるのが人のつとめ」
(オイオイ。何故そんなにやる気に満ち溢れて手を挙げる。さてはアンタ達、成績悪かったな!?)
「本当か!? 雨宮はSP組でレポート課題はないが、仕事の関係で無理だから、三人で早速今日から宜しくな」
「そんな、うぅ……」
こうして、約二週間限定で図書館の手伝いをすることが決定した。
「事件発生!」終
NEXT Scool libraryTOP