『信さんの誕生日』(2)*
部屋に入ると、後から入って来た信さんに突然背中を押され、ベッドに倒された。
「きゃっ!」
(なにっ?)
ベッドのスプリングは優しく受け止めてくれたけど、信さんの突然の行動に驚きを隠せなかった。
「信……さん?」
「ねぇ、蓮。蓮は千早のことが好きなのかい?」
ベッドに近づいてくる信さんに問われる。
(私が、長堀君を? 何で急に……)
「私が好きなのは、信さんだけよ」
(まだ……、信じてくれないの?)
「私も好きだよ。千早に嫉妬するくらいに、ね」
(嫉妬? 長堀君に?)
「長堀君は、信さんの息子じゃない」
「それでも、だよ」
「あぁっ!?」
信さんはサイドボードにトレイを置くとケーキのクリームを手に取り、私の胸……長堀君にかけられた位置にクリームを塗った。
「やっ、気持ち悪い」
体温で溶けたクリームの感触に、ゾクリと鳥肌が立った。
「おや? 千早は良くて、私は駄目なのかい?」
(そんなわけない。分かってるくせに……!)
「ちがっ……あれはっ……あぁんっ!」
肌についたクリームを、信さんが舐めとる。
ザラザラとした舌が肌を這う感覚が官能を刺激する。
「……甘いね」
満足そうに、信さんが笑う。
「ここはどうかな?」
悪戯っぽく笑って、今度はキャミソールとブラの肩紐とをずらし、露になった胸にクリームを乗せた。
クリームの冷たさに、乗せられた瞬間にビクビクと身体が反応する。
「やだ……、あぁっ舐めちゃ……」
ピチャピチャと卑猥な音と、甘い香りが部屋を満たす。
「蓮はどこも甘いね」
(舐めながら喋らないで〜!!)
「あぁ……はっぁ」
(駄目、声が出ちゃう。長堀君も居るのに……)
声が出ないよう、手で口を覆う。
「んんっ!」
クリームと一緒に胸の飾りを舐められ、舌で転がすように愛撫される。
「はっ、ぁぁ……んんっ!」
今日の信さんは執拗で、やめてくれるよう懇願しても、聞き入れてはくれなかった。
――
――――
「もう……だめぇ…あっ、あぁっ! んんっ…はっんん!」
あれからどのくらい時間が経ったのか、私はベッドで仰向けに寝ている信さんに跨がる体制で貫かれていた。
それは所謂騎乗位という体位。
接合部分は、信さんのモノが動く度にクチュクチュという音を立て、それが愛液なのかクリームなのか判別できない。
「ほら、蓮。イヤらしい音が聞こえるね。クリームが蓮の中で溶けたのかな」
(何で恥ずかしいことばっかり〜!)
「知らな……ぁあんっ!」
出さないようにしていたのに、甘い声がひっきりなしに口から零れる。
「あっきゃぁっ! ……ぁぁんっ!」
体位を入れ替えられ、一気にナカを抉られる。
「あっあぁぁん……」
激しい動きに壊れたように声を出すしか出来ない。
同時に小さな芽も指で愛撫される。
「あっあぁ! ……あぁ…はふっ、……信さんっ…もう……ぁっ!」
感じすぎて涙が止まらない。
歪む視界の中、信さんに懇願する。
「蓮……」
掠れた信さんの声。
汗の匂いと香水の香りが混じり合った、信さんだけの香り。
その全てが愛おしくて堪らない。
「大好き……」
好きな気持ちが溢れすぎて、思わず漏れてしまった言葉。
この思いは決して、一時の思いなんかじゃない。
「あっ! あぁん!」
信さんの動きが一層激しくなり、ナカのモノの質量が増した気がした。
「どうして君は、こんなに可愛いんだろうね」
「な、に……?」
快楽の波に押し寄せられ、上手く頭が回らない。
「ねぇ、蓮。誕生日プレゼント、欲しいものがあるんだ」
(プレゼント……? 信さんには、もうプレゼントを渡してあるけど、信さんの望むものなら……)
「なぁに?」
信さんの数少ないおねだりに、自然と笑みが浮かぶ。
「蓮に、私との子どもを産んで欲しいんだ」
「子……ども?」
(私と信さんの?)
「勿論、今直ぐではないよ。蓮はこんなおじさんとの子どもは嫌かい?」
(嫌なわけない。だって、それって……)
「蓮が高校を卒業したら、私と結婚してくれるかい?」
「……嬉しい」
嬉しくて、また違う涙が溢れてくる。
「蓮は泣いてばかりだね。」
瞼に口づけられ、涙を吸われる。
「んっあっ、ああぁぁ!」
膣内を不規則に穿たれ、弱いポイントを攻められる。
そして絶頂を向かえると奥が締まり、信さんが息を詰まらせる。
「……ぁ、あ……」
余韻に浸る蓮の最奥で、信が体液をしぶかせた。
ゴムに覆われていない、ドロリと流れこんでくる体液の感覚に、蓮はあえかな息を零した。
気を失うようにして眠った蓮の膣内から、信は自らの楔を引き抜く。
蜜の滴る蕾からは、信の出した白濁がトロリ…と流れ出てきた。
信はそれを満足そうに眺め、眠る蓮の唇にキスを落とした。
サイドボードの引き出しを開け、中から小さな箱を取り出す。
箱の中には、銀色に輝く指輪が入っている。
信は指輪を手に取り、眠る蓮の右手の薬指へと嵌めた。
目が覚めたらどんな反応をするだろうか。
蓮を部屋に残し、トレーを持ってリビングへ向かう。
「おや……? まだ起きていたのかい?」
リビングには、千早がソファーに座ってノートパソコンを操作していた。
「あぁ……。あのさ、親父。霜月は?」
聞きづらそうに友人を気遣う息子の姿に、信は微笑みを浮かべる。
つまり千早は、引きずるように連れ去った蓮のことが心配で起きていたわけだ。
(本当に、いい子に育ったものだ)
「疲れて眠っているよ」
「そっか。……そうだよな」
予想していたのか、未だ友人と父親との関係を信じたくないのか、千早は小さく呟いた。
「千早、お前はもう少し蓮に優しくできないのか?」
蓮の起きた時用にアイスティーを準備しながら、息子に問いかける。
「何だよ突然」
「蓮はいずれお前の“お母さん”になるわけだからね。せめて“蓮”と名前で呼べるぐらい仲良くなりなさい」
「…………」
アイスティーの入ったグラスをトレーに乗せ、蓮の元へ戻るべくリビングを出る。
「マジかよぉぉぉ!」
階段を上り終わるころ、リビングから息子の悲痛な叫び声が聞こえてきた。
どうやら思考回路が停止していたらしい。
頭では分かっていたが、やはり心が追い付かなかったのだろう。
(我が息子ながら可愛いものだ)
信は苦笑しながら、そう遠くない未来の妻の眠る部屋のドアノブに手をかけた。
*END*
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