『罪』Side信(2)



「ん……んんっ…」

「蓮……」

 互いの息を奪うような口付けを繰り返しながら、信は蓮のバスローブの紐に手をかけた。

「あっ……、だ、め…・・・」

 紐を掴む手を押さえながら、蓮が小さな声で囁く。

「……させて」

「蓮?」

 言っていることの意味が分からずに顔を見てめていると、蓮は俯いてそのまま信の下腹部に顔を寄せた。

「私が、したいの……」

 蓮は信のバスローブの紐を解き、そこに潜んでいた性器に唇を寄せる。

「蓮、やめなさ……」

 蓮の意図を理解して止めようとするが、止める間もなく付け根を舐め上げられて信は息を呑んだ。

「させて……。今日は信さんに感じて欲しいの」

 手で茎を刺激され、舌で先端の先走りを受け止められる。

「ん……!」

 先端を舌先で刺激され、信は生理的な呻き声を漏らした。
 今度は先端から口に含まれ、ちゅぷちゅぷと音を立てながら舐められる。
 蓮からの刺激で、信のモノが形を変えていく。

「気持ちいい?」

 裏筋を舐め上げながら、上目遣いで蓮に見上げられる。

「いや……」

 蓮を止めることを諦め、その代わりに彼女の髪を優しく撫でる。
 拙い舌技に、信のモノは少しずつ成長していった。

「ん……、ふぅ……ぁむ」

 口内で次第に大きくなるものを受け止め、蓮が息苦しそうに喉を鳴らす。

「ん、んんっ!」

 蓮が張り詰めた男根に噎せそうになった瞬間、信は生暖かな白濁を蓮の喉奥にほとば散らせた。 
 楔を口から引き抜くと蓮がコホコホと咳き込み、唇から飲み下せなかった白濁が零れ落ちる。

「……蓮」

 蓮の唇を指で拭い、蓮の身体をベッドに押し倒した。
 バスローブの紐を解き、蓮の蜜部に触れる。

「あっ……!」

 蓮が恥ずかしそうに顔を赤くして横を向く。
 そこは信のモノを舐めて感じたのか、蜜が溢れていた。

「ひぁっ……!」

 蓮の足を開き、信がソコに顔を埋める。濡れた舌先で蕾から溢れる蜜を舐め、舌先を蕾の中に挿入する。

「いや! ……あぁん! ふ、ぁ……」

 首を左右に振って、羞恥に耐えている蓮が可愛くて堪らない。
 信は蓮の蕾から唇を離すと、ヒクつくそこに自身を宛がい、勢い良く貫いた。

「あぁ、あぁぁ……ん!」

 全てをおさめて腰を動かすと、胎内に埋め込んだ楔が脈打ち、大きくなっていく。

「んっ、あっあっ……ふ、んんっ!」

「蓮の中は熱いね。私のモノを咥えて吸い付いてくる」

「恥ずかしいこと言わな……あっ、あんっ!」

 蓮の内壁は収縮を繰り返し、ズプズプと音を立てて信の楔に絡みついてくる。
 蓮は信の動きに合わせて腰を揺らして悶えている。

「あんっ! あぁ……」

 蓮の艶めいた喘ぎ声を聞きながら蓮の腰を抱き込み、激しい律動を繰り返していく。

「蓮……」

 蓮の名を呼びながら、白い胸の頂きに吸いついた。
 ぷっくりと尖った頂きを歯で軽く噛む。

「いっ……! んっ、あぁっ……」

 快楽に酔いしれた表情で、蓮が信にしがみつく。
 信も蓮の背中に腕をまわし、ナカを数回強く突き上げる。
 次の瞬間、胎内で信の屹立が弾けた。

「あぁ……、あっ!」

 深く結合したまま白濁を放たれ、蓮はガクガクと身体を痙攣させる。
 信がイクと同時に、蓮も達したようだ。

「蓮……」

 胎内のモノを引き抜かずに、唇を重ねる。
 互いの舌を絡め、吸い上げる。

「ん……」

 情事の後のキスは、どこまでも甘い。
 甘い快楽の余韻に浸る蓮の背中を掻き抱きながら、信は確かに心が満たされていくのを感じていた。
 その後、二人でシャワーを一緒に浴びて、ベッドに並んで腰掛ける。

「今日は弁護士バッチばかり眺めているのね」

 弁護士バッチ……、正式名称を『弁護士記章』と言う。
 向かいのベッドの上に置いたスーツの上着に付いたバッチを見つめながら、蓮が心配そうに話かける。

「あぁ、思い出していたんだよ。私の罪を……」

「罪?」

 信は腰掛けていたベッドから立ち上がり、スーツの胸ポケットの中から少し色褪せた弁護士バッチを取り出した。

「バッチが二つ?」

 蓮が驚いたように声を上げた。
 一人につきバッチは一つしか貸与されないからだ。

「……妻のものだよ」

「でも、登録から抹消される時は返還しないといけないんじゃ……」

 戸惑うように口にする蓮に、信は説明する。

「遺族に限り返還しなくても良いんだ。だからこれはここにある」

 少し色褪せたバッチを眺めながら、瞳を閉じる。

「妻を守れなかったのは私の罪だ。彼女は彼女の正義を貫いていた。だから私も自分の罪を忘れないように、戒めとして持つことにしている」

「信さん……」

 蓮は信の手の平に持つバッチに、手を重ねた。

「信さんの奥さんは幸せ者ね。なら、奥さんと同じように信さんは信念を貫かなきゃ駄目よ」

 蓮は今にも泣き出しそうに笑いながら、信に抱きついた。

「あぁ、そうだね……」

 蓮に抱き締められながら、信はバッチを握り締めた。
 あの日を悔やまない日はない。
 けれどもう、ズキズキと胸が痛むことはない―――

(これからも、私は君に支えられていくんだろうね……)

 信は幸福感を感じながら、同じように蓮の背中に腕をまわした―――



*END*


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