『苦くて甘いチョコレート』(バレンタイン企画)(2)*
「やっ! 感じてなんて……、あん!」
「言葉にした方が、お前はより感じるだろう? それに……」
珀明は奏を抱き上げた時に一緒に持って来ていたチョコの入った皿に指を浸した。
チョコは室温で緩くなっていて、珀明の体温によって次第に溶けていく。
「やっ! な、に……!?」
ドロリとした生温かい液体が胸に落とされると、鼻にチョコの香りが漂ってくる。
胸に落とされたチョコを乳首に塗り込むように撫でられ、奏は自身の体温で溶けたチョコが肌を伝う感覚にビクビクと身体を震わせた。
「……あぁ、せっかくチョコを塗ったのにお前の体温でどんどん溶けていくな」
そう言うと、珀明はチョコでコーティングされた胸の飾りに顔を近づけ、口に含んだ。
「あぁんっ! ……やぁっ!」
敏感になっていた乳首を舐められ、それだけで奏の口からは甘い声が漏れた。
乳輪にかかったチョコを舌で円を描くように何度も舐められ、乳首の根元から頂きまでをきつく吸い上げられる。
「あんっ…んっ……ああっ」
わざとゆっくりと時間をかけて胸のチョコレートを舐め取り、珀明は奏の膝を立たせスカートの中に手を伸ばした。
「やっ……、いやっ……ぁん!」
「嫌? あぁ、いつもよりも濡れているからか? お前も気に入ったようじゃないか」
下着を取り去らわれ、立てていた膝を割られると奏の蕾が露になる。
そこはまだ触れられていないのに、既に蜜でしっとりと濡れていた。
奏はその言葉に羞恥で顔を赤くさせた。
「ちがっ……! やあぁんっ!」
珀明は再びチョコを指で掬い、蜜で濡れる蕾に二本指を挿入した。
チュププッと濡れた音をさせ、蕾はチョコに塗れた指をスムーズに呑み込んでいく。
指を動かせば、濡れた音が蕾から漏れた。
「本当に違うのか? 初めから二本も指が入る。蜜がどんどん溢れてくるな……」
チョコを足して指を抜き差しされる度、蕾からは卑猥な水音と共にチョコと混ざり合った愛液が溢れ出てくる。
「あっ…あぁっ……、はぁん、あっあっ!」
溶けたチョコと愛液が混じり合ったそこに、珀明は顔を近づけた。
そして、挿入していた指で蕾の入口を広げ、そこに躊躇なく舌を差し込んだ。
「やぁっ! んっ、んっ……、駄目っ……きたなっああぁ!」
わざと大きな音を立てて蜜とチョコを舐められ、同時に愛芽も愛撫される。
まるで電流のように、背筋に快感が走った。
奏は快感から逃れるように無意識に身体を捩り、開かれた膝を閉じるかのように動かした。
「あまり暴れるな。いいのか? シーツがチョコで濡れても。明日メイド達はどう思うだろうな?」
「――――!っ?」
その言葉に、抵抗していた奏の動きがピタリと止まる。
(情事に汚れたシーツを見られることすら恥ずかしいのに、チョコレートで汚れたシーツを見られるなんて……)
奏の抵抗が止むと、珀明は口元に笑みを浮かべて指と舌の動きを再開させた。
「ふっ……あっあっ! ふっ、あぁんっ!」
指で襞を引っ掻くように動かされ、舌で膣内の愛液を舐め取られる。
その間にももう片方の指で膣内にチョコを溢れる程流し込まれ、奏はナカで溶けていくチョコに身悶えた。
「はぁっ…んっんっ……!」
「そろそろか……」
柔らかく緩んだ蕾から指を引き抜き、代わりに自身の硬く猛った先端を宛がった。
「んんぅっ……!」
勢いよく挿ってきた楔の圧迫感に、奏は声を詰まらせた。
膣内を満たしていたチョコが楔によって押し出され、楔と入り口との僅な隙間から溢れ出す。
「くっ……!」
溶けたチョコが内壁とともに蠢き、珀明の屹立に熱く絡みついてくる。
(時間をかけ過ぎたか……)
いつもと違う行為と奏の乱れた姿に、自身も煽られていたことを今更ながらに実感する。
楔が内壁に奥へ奥へと誘われるかのような蠢きに、埋め込んだモノの重が増していく。
珀明は微かに頬を歪め、乱暴に最奥を突き上げ始めた。
深く浅く、強弱をつけてリズムよく内壁を突き上げていく。
「ふぁっ……、あぁっ、あんっ!」
内壁を激しく擦られ、掻き混ぜるように奥を突かれる度に奏の口からは甘い喘ぎ声が溢れた。
「んんっ! やぁっ……あっ、ナカで動い、んんっ!」
楔を抜き差しされる度、膣内に流し込まれたチョコが押し出され、接合部からは愛液と混じり合った液体が溢れ出し、シーツを汚していく。
「ナカ? あぁ、溶けたチョコが胎内で蠢いているんだろう。ほら、私がこうして腰を動かす度に厭らしく水音が響く」
「溶けたチョコとお前の蜜、どちらがより多いのだろうな?」と耳元でそう囁き、深い抽挿を繰り返す。
「いやっ! 掻き混ぜな……あぁっ…はっんん……、あぁっ!」
膣内で溶けたチョコを楔で掻き混ぜるように腰をグラインドされる。
そしてナカを一杯に満たしていく屹立の大きさに奏は喘いだ。
部屋には、肌がぶつかる音と接合部から奏でられる激しい水音。二人の吐息だけが部屋に響き、チョコの甘い香りが漂う。
「……ぁんっ、駄目ぇ、……ふんん、あぁぁっ!」
珀明の望むままに穿たれ、奏は全身が蕩けていくような錯覚に襲われながら絶頂を迎えた。
「くっ……ぁ!」
絶頂と共に膣内がきつく締まり、奥に咥え込んだ楔が締めつけられる。
まるで搾り取るかのような内壁の動きに、珀明は小さく息をつめ、白濁を最奥に放った。
「……ふっ、んん……っ!」
絶頂の余韻に浸ったまま最奥を濡らされ、トロリと流れ込んでくる熱い熱に、奏はあえかな息を零す。
珀明は呼吸を僅かに乱しながら、奏の身体を労るように優しく抱き締めた。
温かな腕に包み込まれるように抱かれ、奏は心が満たされていくのを感じた―――
***
汚れたシーツを剥がし、珀明は奏をバスルームへ連れて行った。
「はっ……、ふぅ……」
珀明によって身体を綺麗に洗われ、湯船で後ろから抱き込まれるように座らされる。
頬に、唇に、優しく触れるだけの口づけが繰り返し落ちてくる。
力の入らない奏は、されるままに甘い声を上げた。
「ん……、珀明さん……チョコ、今度はちゃんと食べて下さいね? 珀明さんが今までにお受け取りになったチョコには、敵いませんけど……」
行為のせいで身体に力の入らない奏は、珀明に凭れかかりながら口にした。
それはチョコを作っている時から不安に思っていたことだ。
(見た目も味も、きっと何もかも敵わない)
「お前が何を気にしているかは知らないが、私は今まで誰かにチョコを貰ったことは一度もない」
「―――え?」
(今まで一度も?)
驚いたように顔を上げれば、珀明は濡れた髪を煩わしげに掻き上げながら息を吐いた。
「元々イベント事には興味がない。それに、他人からは食べ物の類いは絶対に受け取らない。何が入っているか分からないからな」
(珀明さん……)
「ごめんなさい……」
(私、知っていた筈なのに無神経なことを……)
本家に生まれた珀明には、幼い頃から様々な危険性がつきまとっていた。
当主になり、光明の事件以降大きな動きはないが、今でも危険が無くなったわけではない。
「言っただろう? 元々興味はないと。そもそもお前が気にする必要はない。それに……」
珀明は言葉を切り、奏の両手を掴み目の高さまで持ち上げた。そして、指先に触れながら言葉を続けた。
「私にチョコを贈るのはお前だけでいい。最初で最後のな……。私の為に指に怪我を負ったのだろう……?」
指先に残る、無数の小さな傷。
手当てをする程のものではないが、珀明はその傷を見て眉間に皺を寄せた。
(瑪瑙がこんな怪我を負うぐらいなら、チョコなど必要ない……)
しかしそう思うと同時に、誰に言われるでもなく瑪瑙自ら自分の為に動いてくれたことに、喜びを感じている自分も居る。
(本当にお前は、……厄介だな)
「あっ……!」
珀明は掴んだ奏の指に唇を寄せ、瞳を閉じて愛しむように口づけた。
お前は知らないだろう?
お前が私の為に何か行動を起こす度、私がどれ程驚き、どれ程心が満たされ、安心するのか。
この想いはもう一方的なものではないのだと―――
*END*
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