「年越し」(新年企画)
年越しそばを食べ、珀明と奏は寝室のソファに座って紅茶を飲んでいた。
就寝前なので、今夜はカモミールティー。
「今年もあと少しですね」
時刻は二十三時五十五分。
もう直ぐ、年明け。
「そうだな……」
今年は本当に、色々なことがあった。
珀明との結婚、その結婚に隠された一族間のいざこざ。
「どうした?」
ティーカップをじっと見つめている奏を珀明が心配そうに見る。
心配そうに、と言っても表情には出ない。
だが、僅かな変化を奏は読み取ることが出来る。
「いいえ、何でもありません。今年は色々なことがあったなと、思い出していたんです」
「……そうか」
珀明は隣に座る奏の頭を引き寄せ、自分の腕に凭れかけさせた。
頬に、珀明の温もりが伝わってくる。
(いつからだろう? 珀明さんの体温が心地良く感じるようになったのは……)
奏は珀明の腕に身を任せるように瞳を閉じた。
――そして、年明け。
時計が零時を指し、珀明は腕に凭れかかったたままの奏を見た。
「瑪瑙? 寝たのか……」
奏は瞼を閉じ、眠っていた。
「三分で眠れるとは……」
珀明は呆れながらも、奏を抱き上げてベッドへと運んでいく。
ベッドの上にゆっくりと下ろし、眠っている奏の頬をそっと撫でる。
(去年は本当に、瑪瑙には辛い思いをさせた。不自由な生活を強いている自覚もある。だが、もう手放すことは出来ない)
来年も再来年も、十年後もずっと……
「死ぬまで、お前は私のものだ」
珀明は祈るように一度瞳を閉じ、そして奏の唇に誓うように口付けを落とした。
A HAPPY NEW YEAR?
*END*
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