「秘書の憂鬱」Sideレイヴン
(番外編『仮装パーティー』を先にお読み下さい)
「レイヴン、至急SHIMOTUKIカンパニーに連絡を。次に、これを海外開発部に突き返して来い。話しにならん」
「畏まりました」
レイヴンは上司である珀明から書類を受け取り、社長室を後にした。
(は〜、やれやれ。上司が人使い荒いと、秘書は忙しくて嫌になっちゃいますね)
秘書室に戻るべく、廊下を歩きながら肩をトントンと叩く。
(まぁ、これも自業自得って言うんですかねぇ?)
「全く、八つ当たりも勘弁して欲しいもんですね」
あのハロウィンパーティーで奏と踊った一件以来、珀明から八つ当たりで殺人的な量の仕事を与えられるようになったのだ。
(八つ当たりって言うか、嫉妬ですね。アレは。まぁ、奏様とのダンスは役得でしたけど、あの腰の細さにはビックリですね)
「でもあの人が嫉妬だなんて、人間的な所もまだあったんですねぇ」
高校生の頃に両親を亡くしてから、珀明は変わった。
人を射ぬくような眼光。纏う気配は鋭く、人を寄せ付けることを許さない。
“死神”と呼ばれる彼が一人の少女を大切にしているだなんて、誰が想像出来ただろうか。
「まぁ、そんな貴方も嫌いじゃないですよ。俺は」
(俺はただの脇役ですからねぇ。いいように使われてあげます)
自分が秘書に飽きないうちは、ではあるが。
(まぁ、案外執事になるのも良いかもしれませんね。奏様と一日中一緒ですし)
そうなったら、珀明はどんな顔をするのだろうか。
(……まぁ、親父に執事として再教育されるのは暫くはごめんなんで、当分転職予定はありませんけどね)
*END*
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