『腕の中の温もり』side珀明



 「ん……」


 冬に入り、朝晩だけで無く昼間も肌寒さを感じる様になった。
 鳥の鳴き声すら聞こえぬ静かな朝、珀明は腕に違和感を感じて目が覚めた。


「瑪瑙……?」


 瞼を開けた先には瑪瑙の黒い髪。
 どうやら、珀明の胸に額を押し付ける様に眠っている瑪瑙が寝返りをうったようだ。
 
 布団の隙間から見える白い肩。シーツに散らばる黒い髪。その髪の間から覗くうなじ。
 規則正しい寝息から、瑪瑙の眠りが深いことが分かる。

 朝目覚めると、腕の中に大切な者が居る。その些細なことが、こんなにも心を満たしてくれることを、珀明は結婚してから知った。

 珀明はサイドボードの上に置かれたリモコンで暖房を付けた。
 起動したエアコンから温かな風が流れてくる。


「んっ………」


 また、腕の中で瑪瑙が身動いだ。再び寝返りを打ち、今度は仰向けになる。
 仰向けになれば、珀明の目に瑪瑙の白い首が露になる。
 雪の様に白い首筋に、小さく散らばる朱色。


 ――否、首筋だけでは無い。布団を捲れば、身体中に赤い痕が散らばっている。


 珀明は瑪瑙の首筋に残る赤い痕を満足そうに指で撫でた。
 この赤い痕は珀明の想いの証。口では上手く伝えられない代わりに、瑪瑙の身体に幾つもの赤い花を咲かせた。
 布団を捲り、首筋から手を下へと移動させて行く。鎖骨の痕を撫で、形のよい乳房の頂きを人差し指と親指で軽く摘まんだ。


「んっ……!!」


 摘まんだ瞬間、瑪瑙の身体がピクリと反応する。しかし、覚醒にはまだ程遠いらしく瞳は閉じられたままだ。
 摘まんだ頂きをクリクリと揉めば、次第に硬く尖っていく。ツンと尖った頂きを口に含み、最初は舌で優しく全体を舐め上げる。
 そして今度は唇で頂きを含み、チュッと音を立てて吸ってやる。


「んっ、…んぅっ、あんっ……!!」


 甘い声をあげて瑪瑙が無意識に首を左右に振った。
 その甘い声に誘われる様に、珀明は更に下へと手を移動させた。

 両膝を立たせ、太股を開かせる。そうすれば、狭間にある蕾が露になる。
 蕾に指を這わせ、指で左右に少し開く。すると膣内からトロリ…と白い体液が溢れてくる。


 ――昨夜珀明が注いだ精液だ。


 いつもなら情事の後に身体を清めてやるのだが、始末する前に珀明も疲れて眠ってしまったのだ。
 蕾に人差し指と中指を挿入し、膣内の様子を確認する。残っていた白濁の為で膣内はまだ柔らかく、グルリと二本の指で掻き回せば襞が蠢き指に吸い付いてくる。


「ふっ、……あっん、ぁ……っ」


 指を曲げ、襞を引っ掻く様に擦り瑪瑙の弱い場所を突く。そうれば、新たに溢れた愛液と白濁が混ざり、水音が少し大きくなった。


「あっふっ……、ひ、んっ……っ!」


 膣内から指を引き抜くと、同時に白濁と愛液が溢れ出た。
 瑪瑙の両脚を抱え上げ、自身の屹立を蕾に押し当てたところで、瑪瑙の身体がビクリと反応した。


「……ん、な……に? はく、めい……さん?」


 覚醒したばかりで状況を分かっていない瑪瑙を無視し、珀明は熱塊を一気に突き入れた。


「あぁっ……! あっ、あんっ!」


 内壁を突き進んでくる楔に、瑪瑙は悲鳴混じりの声を上げた。
 膣一杯に楔を受け入れた瑪瑙は、荒く呼吸を繰り返し目尻に涙を溜めて珀明を見た。


「珀明さん、いや……ぁっ」

「嫌では無いだろう? ……ナカに残っているものを出すだけだ」

「う、そ……。だって、違い…、ます……」


 入られている物が指で無いと分かっている瑪瑙は、珀明の言葉に眉を寄せた。


(流石に騙すことは無理か……)


「違わないさ。いつもの様に私の指で掻き出してやる。再びお前の最奥を濡らした後、でな……」


 答えとともに、腰を動かし注挿を開始する。


「やっ…! ふっ……」


 強弱をつけて内壁を深く穿ち、屹立に熱く絡み付く媚肉を味わう。突き上げの度、瑪瑙は声が出そうになるのを堪える様に唇を噛み締めた。


「我慢せずに啼けばいい。いつも途中からは甘い声で啼いているだろう?」


(そうでなければ面白くない……)


 与えられる快感で理性が無くなった時のことを言われ、瑪瑙は羞恥で顔を赤くした。
 瑪瑙の耳に舌を這わせれば、耳にかけられた息が感じたのか、鼻にかかった吐息が溢れた。


「ヤっ! 言わな……、で……」


 イヤイヤと左右に首を振る仕草も男を煽る行為にしかならないことを、瑪瑙だけが知らない。
 赤い瑪瑙の唇が目に入り、まだ一度も口づけを交わしていない事に気付き、瑪瑙の唇に自身のソレを押し当てた。


「はぅっ、……ん、ぁんっ……はぁ…」


 逃げる舌を追い詰め、舌を絡めて吸い上げる。歯列と口腔をたっぷりと舐め、わざと湿った音を立てて唇を離した。
 緩く律動を繰り返していた膣内を再び深く抉り、円を描く様に腰を動かす。
 抜き差しの度に襞が珀明の楔に吸い付き、奥へ奥へと引き込んで行く。


「あんっ、ぅんっ……は、ひゃんっ……あっ、あっ!」


 瑪瑙は腕を伸ばし、珀明の背中にしがみついた。快感の波に理性を無くしかけた瑪瑙に、征服感と満足感が珀明を満たして行く。
 珀明にも限界が近づき、激しく子宮口を穿って行く。
 手を乳房に伸ばし、包み込む様に揉みしだき、その柔らかな肌の感触を楽しむ。


「んっ、んっ、あぁんっ! はんっ……ふ、あぁぁ!」


 膣内が収縮し、痺れにも似た感覚が珀明を襲う。


「……そろそろ、出すぞ」


 膣内の剛直が痛いほど張り詰め、珀明の呼吸も荒くなる。


「ひゃっ! あんっ、あ……、ひっ、あぁぁ―――!!」

「―――っ!」


 絶頂に達した瑪瑙の身体がビクリと震え、それと同時に珀明が子宮口に向かって熱い精を放つ。
 最奥でビュクビュクと放たれた自身の精液が、瑪瑙の内壁を濡らしている。
 その事実は、珀明を酷く満足させた。


「……ぁっ!」


 楔を引き抜くと蕾からは大量の白濁が溢れ出す。


「いい眺めだな……」


 力が入らず開かれたままの脚。しどげなく開かれた狭間からは、トロリ…と白濁と愛液とが混ざった体液がシーツを濡らしていく。


「――珀明さん!」


 恥ずかしいことを軽々しく口にする珀明に、瑪瑙が批難の声を上げる。


「ナカから溢れ出る量が多いな……」

「……く、口にしないでください!」


 瑪瑙の言葉を無視し、クスリと笑う。


(……ナカに出してそのまま朝を迎えるのも悪くない。ナカが柔らかく、容易く私を受け入れる。……瑪瑙には決して言えないがな)


「……疲れただろう? 眠っても構わない」


 まだ起床時間には少し早い。瑪瑙の髪を撫で、眠る様に促す。
 起き抜けの行為に疲れたのか、瑪瑙は大人しく瞳を閉じた。


「もう、変なことしないで下さいね」


 しっかりと釘を刺すことを忘れない瑪瑙に、笑いが込み上げてくる。


(本当に、お前と居ると退屈しない……)


「……嫌だったか?」


「その割には随分楽しんでいた様だが……」と口に出さず心の中で呟く。


(お前は「嫌とか、そんな問題じゃありません!」と怒るだろうか……)


 どんな反応が返ってくるかと何パターンか想像していると、瑪瑙が恥ずかしそうに口を開いた。


「……ヤじゃ、ないです。……恥ずかしかった、ですけど。でも私は、朝…珀明さんが隣に居るだけで、幸せ……、ですから……」


 それは、珀明の想像を上回る言葉―――


 最後まで言葉は続かず、代わりに聞こえて来るのは規則正しい寝息。
 自分が朝目覚めた時、隣に瑪瑙が居ることで心が満たされる様に、自分が隣に居ることで瑪瑙も幸福な気持ちになることが嬉かった。


「……朝から無理をさせたからな。無理も無い」


 傍に居れば触れたくなる。
 触れれば抱き締めたくなり、抱き締めれば其だけでは足りず抱きたくなる。


「厄介だな、お前は……」


 珀明は眠る瑪瑙の前髪をかき揚げ、いとおしむ様に額に口づけを落とした―――



*『腕の中の温もり』END*

未希子様に捧げます。
キリリク有難うございました。



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