『好きだからこそ』(4)



 珀明ですら、あの容姿は童顔の一言では済まされないだろうと思う。

 幼稚舎の頃からの付き合いになるが、高等部時代からその美貌は衰えていないように思える。
 身長は百五十センチにも満たず、腰に届きそうな長く透けるような金色の髪。猫を思わせる大きな瞳。出産しても崩れることの無い体型。
 どれも人間離れしたものだが、堕希の旧姓である小鳥(ことり)の家系は皆年齢不詳として各界でも有名だ。

 珀明たちが在学していた頃、堕希の祖父が学園の理事を務めていたが、その容姿から夜の街で未成年者に間違えられ補導されていたことが度々学内新聞に掲載されていた。


「事実だ。私の言葉が信じられないのなら葉月やレイヴンに聞くといい。書斎にあるアルバムにも載っている」

「……いえ、信じます」


 気まずそうに俯く奏に珀明は笑った。奏の頬が羞恥で赤く染まっていたからだ。


(可愛らしいものだな……)


 奏が嫉妬する程自分のことを好いてくれていることが分かり、珀明を喜ばせた。
 
 しかし……
 
 珀明はクイッと奏の顎に指を掛けて上を向かせ、逸らされる瞳を気にすること無く言った。


「では次は私の番だな。私はお前に部屋を出るなと言っていたが、部屋を抜け出すとはどういうことだ? 誤解をして私を困らせた責任をどう取って貰おうか」

「そっ、それはっ……!!」


 慌てる奏の言葉を無視し、そのままシーツへと再び奏の身体を押し倒した。


「ふ……ぁ、んぅ……」


 奏の唇からは、喘ぎ声と呻き声ともつかない吐息が溢れていた。
 その甘い声をもっと聞きたいと、珀明は何度も角度を変えては奏の唇を貪った。
 数日間禁欲生活を強いられていた珀明は、奏の全てを食らい尽くそうとするかのようにとても貪欲だ。


「……ぁ、……はっ…んっ」


 舌を絡め取られて強く吸われ、奏は息苦しさに切な気に眉を寄せた。
 執拗に舌を吸い上げられ、甘い痺れが身体を包んでいく。


「瑪瑙」


 ようやく唇を離した珀明は、キスの余韻でぼんやりとしている奏を見下ろした。
 火照った顔。潤んだ瞳。


「今後、気になることは必ず口にしろ。言っておくが、二度目は無い」

「はい……」


 小さな声でそう言い、奏はきゅっと珀明の首に腕を回して抱きついた。


(可愛いことを……)


 奏の行動に内心微笑み、奏の唇に触れるだけの口づけを落とした。

 珀明は奏に首に回した腕を外させると、奏の着ているワンピースの肩紐に手をかけた。
 フロントホックのブラとショーツを脱がし、現れた両方の胸の頂を指先で摘まみ、親指の腹で円を描くようにして愛撫した。


「あっ……あっ、……ああっ」


 奏の唇からは抑えきれない甘い声が零れて行く。
 恥ずかしさから顔を枕で隠そうと顔を背けようとするが、珀明によって枕を取り上げられてしまう。


「きゃぅっ!」


 罰を与えるように頂きを強く捏ねられ、奏は身体をビクリと跳ねさせた。


「あっ、いたっ……ふぁっ、んんっ!」

「痛いのにも感じるのか?」

「違っ……ひゃんっ!!」


 捏ねられたせいでジンジンと痛む頂きを、今度は舌でペロリと舐められる。
 ザラリとした熱い舌が肌を這う度、ビクビクと小さく身体が震える。


「ん、んっ……」


 胸への愛撫が止み、足の狭間へと指を這わされる。
 珀明しか知らない蕾の入り口をノックをするように人差し指でつつかれると、クチュリと濡れた水音が響いた。


「もう濡れているのか? 痛いのに感じたんだろう?」


 「……淫乱」と耳元で囁かれ、カプリと耳朶を甘噛みされる。
 熱い吐息が耳にあたり、奏は羞恥で顔を赤くしギュッと目をつむった。


「ふぁっ、違っ」

「お前の口は嘘つきだからな。正直なのは下の口だけか……」


 クッと笑い、珀明が蕾に二本の指を一気に突き入れた。


「あぁぁっ!!」


 乾いた指を愛液で濡らすように膣内をグルリと掻き回される。珀明の指が抜き差しされる度にクチュクチュと濡れた水音が響いた。


「う、んんっ……、ぁん!!」

「何時もより濡れるのが早いな……、直ぐにでも挿れられそうだ」


 膣の具合を指で確かめながら、珀明は奏には聞こえない小さな声で呟いた。


(私もまだ若いと言うことか……)


 奏を愛撫しながらも、早く奏の胎内に自身を突き入れ、記憶している熱さを味わいたくて仕方無かった。

 自身を宥めながら充分に準備を施し、指を引き抜いたそこに自身を宛がい身体を重ねて行く。


―――――
―――


 グリッと奏の胎内で楔が動いた。円を描くように腰を回され、内壁を擦られる。熱い楔を蕾の入り口付近まで抜かれ、直ぐにまた最奥へと強く突き入れられた。


「んっ……! 待って……強くしな……あっぅっ、んんっ!」

「強くされるのは好きだろう? 私を奥へ奥へと引きずって行くのはお前の方だぞ」


 意地悪な珀明の言葉に、奏は顔を赤くして頭を振る。

 口を聞かなくなってからたった三日しか経って居なかったが、前に抱かれてから二週間近く経っていた。
 両想いになってからは三日と空けずに抱かれていた為、こんなにも離れて居たのは初めてだ。
 
 そのせいだろうか、身体が飢えたように珀明を求めてしまう。


「あっあっ、んっ! 好きじゃな……ふぁっ、はっ、あぁっ!」


 嘘を責めるように、先端部分が弱い場所を擦った。


「嘘が下手だな。それに比べて、ココは素直だ」

「あぁっ! 嫌っ、そこは駄目、やっ……、あっ、はぁっ……あぁっ!」


 弱い場所を容赦無く責められ、身体が一気に熱くなる。


「……少し激しく動くぞ」


 その言葉通り、すぐに抽挿が激しくなった。


「な……に? ひっ、やっ、あんっ! あっあっ、……も、やっ!」


 力強く腰を打ち付けられ、その激しい動きに奏は安定を求めて珀明の首に腕を絡めて縋りつく。


「そうだ。そのままつかまっていろ」

「あ、はっ……あんっ、はく……めいさ……」


 甘い声に応えるように、珀明は奏の弱い場所を擦り上げる。
 珀明の厚い胸板に奏の形のよい胸が密着し、律動に合わせて柔らかく潰れ、吸い付くような感触を珀明に与える。
 奏は酸素を求める魚のように荒い呼吸を繰り返した。


「あっ、あっ、はぅっ! ん、だめっ、だっ……あっあぁ―――!!」


 甘い矯声と共に、膣内が激しく男の楔を締め付ける。


「――――っ!!」


 珀明は膣の甘美な締め付けに形のよい眉を歪ませ、搾り取られるように白濁を放った。


「んっ……、ぁ……」


 膣内で男根がビクビクと放出する感覚に、奏の口からは甘い声が溢れた。


「は……ぁ……、――やっ!!」

「まだだ」


 うねるように温かくまとわりつく媚肉の感触を味わいながら、珀明は奏の腰を掴んだまま、敏感になっている内壁を擦り上げた。


「私を心配させた罰だ。今夜は眠れないと思え」

「そんな……、――ひゃっ!! あっ、やぁっ……あんっ、んん!!」


 奥に当たる度、奏の身体がビクビクと震える。
 もうやめてと潤んだ瞳で見上げてくるその姿はとても愛らしい。

 過度な快楽は時に残酷だ。奏がとっくに限界を迎えていることを知っていながら、渇いた身体はそう簡単には満たされない。


「ふっ、あ……ん。あぁっ!」



 桃色に上気した肌に誘われるように、珀明は奏の細い首筋に噛みつくように唇を落とした―――

 男が満足するのは、それから数時間後……。空が白み始め、鳥のさえずりが聞こえるようになってからのことだった―――



*END*

ユナ様に捧げます。
キリリク有難うございました。



花嫁TOP