『初デート』(2)




 ***



 窓から入ってくる日差しで温かくなったラグに座り、冴と和威は食事をしていた。
 和威がシャワーを浴びて服を着替えている間に、冴はワカメスープに水菜と生ハムのパスタを作った。


「今日は悪い、約束守れなくて」


 料理を粗方食べ終わって珈琲を飲んでいると、和威が手を合わせて謝ってきた。
 和威は金曜日の夜からあの分厚い小説を読み始めたらしく、翌日の冴が来るまで眠らずに読んでいたと言うのだ。

 本に集中する余り、携帯も着信があれば無意識に止めてしまうのだと言う。

 冴は冷めた目で、和威を見つめた。

 シャワーを浴びて着替えた和威は、綿のシャツに黒いズボンというラフな格好をしている。
 シャツの首元と裾、袖の部分が少し長く、袖にはそれぞれ三つ飾りボタンが付いている。
 ズボンには、百合が象られたシルバーチェーン。


「もういいよ。次からは気をつけて」


 怒っても過ぎた時間は返ってこない。
 しかし、本に負けたみたいで少し悔しい。

 和威はテーブルを動かし、冴に近寄って頬に優しく触れる。


「本当にごめん。わざわざお洒落してくれたんだろ? 凄く似合ってるよぜ」


 今日の和威は、普段の意地悪な彼とは比べものにならないくらい優しい。
 今日の為に冴は同じ聖徒会役員でもあり友人である夏目充に、彼の母親が経営するブティックで洋服を見立てて貰っていたのだ。

 黒のVネックに、中央から皮紐で編み上げられたカットソー。
 同じく、裾の一部に赤い蝶がプリントされた黒いプリーツスカート。 
 そして、茶色い編み上げブーツ。
 髪の両サイドを高く括り、緩く巻いている。

 和威に頬を優しく撫でられても、反応を示さない冴に焦れたのか、和威が唇に口づけてきた。


「んん……」


 宥めるように、和威の柔らかい舌が口内をなぞる。
 舌を絡められると、和威が飲んでいたブラック珈琲の苦味が口に広がる。
 
 和威は冴がキスに酔ってきた頃に唇を少しだけ離し、冴の顔を見つめる。


「許してくれるか?」


 普段ならキスで懐柔されることは絶対にないのだが、久々のキスに酔っていた冴は小さく頷いた。
 和威は嬉しそうに僅かに顔を綻ばせる。
 和威はそのまま冴の身体を抱き締め、キスをしたままラグに身体を預けるようにして押し倒した。


「ふ……んんっ……」


 キスをしながら上着を捲られ、黒地に銀の糸で綺麗に刺繍された花柄のブラが露になる。
 胸の谷間にキスを落とされ、そこを吸われる。


「あっ! ……んっ!」


 チクリと僅かな痛みを感じ、冴は身体を震わせた。
 和威はブラのホックを外し、柔らかな白い肌に赤い花を咲かせていた唇でピンク色の頂きを舐め上げた。


「あ……あんっ、あっ!」


 頂きはとても敏感で、舐め上げられる度にピンッと天を向いて硬く尖っていく。
 足の間に身体を割り込まれ、スカートも腰まで捲り上げられる。
 ブラに合わせた黒い下着も脱がされ、慎ましく閉じた蕾が和威の目に触れる。


「可愛い…・・・」


 蕾に顔を寄せてフーッと息をかけられ、親指で襞を擦られる。
 初めは乾いた和威の指が襞を擦る度に引っかかるようだったが、次第に蕾から溢れた愛液で指がスムーズに抜き差しされる。


「あんっ!  あっ…やぁっ……!」


 指で円を描くように掻きまぜられ、指の腹で弱い場所を擦られる。


「綺麗なピンク色だな。まるで、何も知らないみたいだ……」


 意地悪に囁かれ、和威の吐息と指の刺激だけで蕾がヒクリと伸縮を繰り返す。


「はぁんっ……っ!」


 クプリと人差し指を挿入され、ナカの具合を確認するように前後に擦られる。


「どんどん蜜が溢れてくる。さっきまで慎ましく閉じてたのに……」


「んっ! んっ、意地悪……もうっ……」


 指ではなく、和威が欲しい。
 目でそう訴えると、和威は愛しいものを見るように目を細めた。

 愛芽を空いたもう片方の親指で擦り上げる。


「……ひゃんっ!」


 愛芽と蕾の二点同時に刺激され、身体がビクンッと大きく波打つ。


「言って……、何が欲しいのか」


 愛芽を摘むようにして刺激しながら、和威が笑う。


「ばかぁ……」


 恥ずかしくて、そんなこと口に出来ない。


「和威、のが欲しい。早く、来て……」


 それでも、指からの刺激だけで達してしまいそうで、冴は淫らな言葉を紡いだ。
 それが和威を満足させたらしく、指が引き抜かれる。


「ん……」


 和威は身体を起こし、壁際に置かれた白い引き出しの中からスキンを取り出した。
 荒く熱い息を吐きながら、和威が自分の屹立にスキンをかける様子を見つめる。
 無意識に、ゴクン…と喉が鳴った。

 スキンのかけられたそれはひどく卑猥で、真昼から行われようとする行為が、とてもいけないことのように感じる。


「力、抜いとけよ」


 足を広げられ、ゆっくりと息を吐く。
 久々に受け入れることへの不安を隠すように、冴は和威の背中に手を回した。

 ゆっくりと、和威の屹立が入ってくる。


「……あ、はぁっ…んん、……和威…かず…」


 僅かな異物感に眉を寄せ、冴は何度も和威の名前を呼んだ。
 全てをおさめられると、狭い膣内が和威でいっぱいに満たされる。

 ドクドクと自分のものではない鼓動を感じる。


「分かるか? 俺がお前の中に入ってるの」


 瞳を覗き込みながら、和威は汗で張り付いた冴の前髪を梳いた。
 その仕草は優しくて、それだけで冴の身体は喜びを感じ、和威のモノを締めつける。

 締めつけた和威は温かくて、冴の締めつけにそれは硬度を増していく。


「んっ…和威で、……いっぱい」


 うっとりと囁くと、和威が眉を寄せた。


「……動くぞ」


 冴の返事を待たに、和威が律動を開始する。
 床に膝立ちになり、和威は柔らかな二つの胸を揉みしだく。


「あんっ! あっ、あっあっ……はぁん…ふっ!」


 激しく腰を打ち付けられ、与えられるその甘い刺激に内側から溶けていくような錯覚に襲われる。
 粘膜が男根に吸い付き、収縮を繰り返す。


「ヤベッ……、ナカが吸い付いてくる」

「ああぁんっ!」


 繋がったまま、グリッと腰を回され、弱い場所に亀頭が当たる。


「あっ、あっ、あっ!」


 そのままリズミカルに突き上げられ、引っ切りなしに喘ぎ声が零れる。

 日差しを浴びた冴の身体は与えられる快感でピンク色に染まる。
 その煽情的な姿に、和威の男根が煽られ痛い程に張り詰める。

 接合部からはクチュクチュと水音がし、和威は味わうように深く長い抽挿を繰り返した。


「和威、駄目…もう……ああぁぁ!!」


 和威の動きが、一層速くなった。
 敏感な内壁を灼熱で擦り上げられる。


「ああああぁぁ!!」

「ぁっ………っ!」


 和威は冴の胸を揉んでいた手を外して腰を掴む。
 そのまま数回最奥を突き上げ、冴が逝ったのを確認して身体の奥に熱い体液をゴム越しに迸らせた。



***



「ん……」


 黒いシーツの海で、和威が寝息を立てている。
 冴を抱いて身体を温かいタオルで綺麗に拭い、ベッドに運んだ後に電池が切れるように眠ってしまったのだ。

 眼鏡をしていない顔が新鮮で、冴は飽きることなく眺めていた。

 時刻は午後三時を回ったばかりで、爽やかな風が窓から入り、和威の綺麗な黒髪を揺らす。


「大好き……」


 冴は眠る和威の頬にキスを落とし、和威の隣に潜り込む。
 すると、和威の腕が抱き枕のように冴の身体を抱き寄せた。

 冴は和威の腕に自分の手を絡め、眠りに落ちていった。



*END*


陽菜様に捧げます。
キリリク有難うございました。



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